2014-01

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スーパープレゼンテーション考察 ~お金で本当の心は買えません~



 
 今回のテーマ動画

 Michael Sandel:Why we shouldn't trust markets with our civic life

 訳:『どうして私たちは生活を市場に任せるべきではないのか』

 動画リンク(日本語字幕付き)




 さて、

 今回のテーマは「人々」と「市場」です。

 市場……取引をする場、と考えるのが一番早いでしょう。

 
 世の中では、たくさんの物が絶えることなく取引されています。

 食べ物・服・装飾品・娯楽品などなど……それらがお金を間に挟みつつ取引されている。

 スーパーマーケットにて1000円でカレーの材料を買う、デパートでアクセサリーやおもちゃを買う、これもみんな取引。

 円をドルに換えるといったものも立派な取引ですね。

 かつての取引は物々交換と呼ばれ、通貨(お金)を間に挟むことなく物と物とで取引がされていました。

 米と魚を交換したり、木材と石材を取引したり、それぞれ独自の判断で決めた物の価値のもと取引をする。

 しかしいろんな出来事によって物の価値は絶えず大きく代わるものだとわかると、常に価値の変わらないもの「通貨」を導入。

 そして、次第に通貨を持っている量によって裕福貧乏が決められていったのです。



 そんなわけで、いつごろ導入されたのかはわかりませんが結構古いころから長く続いている通貨システム。

 今までは物と物、通貨と物、物と通貨といった取引が一般的でした。目に見えるものとして誰もが価値を認めてくれる物のみが取引の対象となってきた。

 しかし、最近になって通貨の使い方に新たな方法が出現。

 その使い方とは「サービス」と「時間」。

 サービスの例を挙げると、宅配便・マッサージ・美容室など。どれも目に見えるものではないけれども、皆普通に価値あることとしてお金を払っている。

 時間の例を挙げると、課金ゲームの経験値2倍アイテムとか並び屋。お金を払うことで、本来必要な時間を短縮し別のことに時間を割くことができる。

 また、特殊な話ですが戦争に関してもかなり金が絡んでいます。戦争に民間企業からの傭兵を使い、国民には被害が及ばないようにしているらしい。

 今や、ほとんどお金で払えないものはないと言っても過言ではないでしょう。

 金


 今回のプレゼン者であるハーバード大学教授・マイケル・サンデル氏は、

 「無意識のうちに市場経済から"市場社会"へと変わっている」

 と話します。

 市場経済とは、市場により動かされている経済状態。ビジネスに関してはこの市場経済に支配されていますが、日常生活や慣習に市場が及ぶことはありません。

 対して市場社会とは、社会全てが市場によって支配されている状態。何気ないところでも取引のような考え方が出てくる状態です。

 彼はこの「市場社会」について警鐘を鳴らします。

 
 なぜ市場社会について危機感を持つのだろうか?

 理由は2つ。

 1つ目は、裕福な人と貧乏な人との差がより広がるから

 お金で買えるものが増えれば増えるほど、お金の重要度は増してくる。

 お金で買えるものとは、つまるところ選択肢。

 選択肢は多ければ多いほど有利だし、少なければ少ないほど不利になるのは当然のこと。

 ちょっと質のいい物や生活に必要でない物を買えることがお金持ちの特権ならばそれほど不平等にはなりません。

 しかし、生活の基本となる最低限の食べ物・教育・住居・保険などにお金が絡んでくるとどうでしょう?

 貧乏な人は何もすることができない。

 逆に裕福な人は何でもできる。

 お金で買えるものの幅が広がることで、裕福な人は選択肢が増え、貧乏な人は選択肢が減ってしまう。

 平等をうたう民主主義社会において絶対にあってはいけないことです。

 
 2つ目の理由は、地域や家庭内における慣習への影響

 仕事に関して言えば市場は最良の方法ですが、日常や慣習にまで関わってくるとその慣習の意味を大きく変えてしまう。

 そして慣習の意味が変わることで大切な価値観を失ってしまうかもしれない。

 感謝・思いやりや好奇心といった道徳的価値観です。

 例えば家族にしていたマッサージに報酬金が付くとしましょう。

 すると、いつも仕事や家事をしてくれてありがとうという感謝の気持ちを込めてしていたものが、報酬金目当てになってしまい感謝の気持ちはなくなってしまう可能性がある。

 天秤


 実際にマイケル氏はこの価値観について2つの実験を挙げています。

 1つ目は、子供たちの成績に応じて報酬金をあげるという実験。

 2つ目は、子供たちが読んだ本の量に応じて報酬金をあげるという実験。

 実験の結果は後にして、

 皆さんはこれらの実験を行うこと自体に対してどう思いますか?

 成績や読書量が上がる可能性があるのならいいじゃないかと思うのか、

 それとも金で子供を釣るなんて道徳的に悪影響を及ぼすと思うのか。


 彼は賛成派・反対派である観客の2人から意見を聞きました。
 
 賛成派の意見はこう。

 「お金をあげたときに読んだ数とその後の数を調べてみる価値はあると思う」

 対して反対派の意見。

 「学習への意欲がお金のための動機に変わってしまうのは子供によくない」

 問題は、

・金銭的な褒美は子供から理想的とする動機を奪ってしまうかどうか
・実験後子供たちはどう行動するか

 特に実験後子供たちが成績や読書に対してどのように考えるのかが重要なポイント。

 もしも実験後の子供たちが実験前よりも本を読むようになれば、万々歳と言えるでしょう。

 逆に実験前よりも本を読まなくなった場合は悪影響を及ぼしていると言える。


 気になる結果の方ですが、プレゼンでは言わなかったマイケル氏に代わって調べてみると「効果は良かったり悪かったり」とのこと。

 本を読むようにはなったけど薄い本ばかりを読むようになったと微妙な結果もあります。

 一概に読書に報酬を与えることが良いこととも悪いこととも言えないようです。

 今後長きにわたってこの議論はされていくでしょう。


 本の良さ


 
 では、まとめ。

 市場主義をまんべんなく取り入れていくデメリットとはなんでしょう。

 そのデメリットは、「教育や触れ合いにおいて大切とされる道徳的価値が失われるかもしれない」こと。

 人と人との触れ合いで大切とされる感謝や思いやりの気持ち、それと学びへの意欲が失われるかもしれない。


 次に、広がりつつある市場主義に対して私たちは何ができるのか。

 マイケル氏は「市場主義の適用範囲を考えなければならない」と言います。

 必要とする分野、必要としない分野、悪影響となる分野。
 
 いろんなものをこの3つに分けて考えなければいけません。

 そして欠かせないのが議論。

 人々・教育・環境・軍事・政治……今まで避けてきた事も含めたあらゆる分野について議論を積み重ねなければならない。

 もちろん辛いことでしょう。でも関わっていかなければならない。


 このまま進めば、お金で買えるものはさらに増えていくでしょう。

 そうすると、裕福な人と貧乏な人との格差はさらに大きくなる。

 裕福な人の暮らしと貧乏な人の暮らしは、全く次元の違ったものにまでなってしまうのかもしれない。

 

 そこまで語って、彼は問います。

 「我々が望むのは何でもお金で買える社会なのか、それとも、お金では買えない道徳的・市民的な善というものがある社会なのか?」

 ハート





 さて、ここからは私としての感想。

 考えてほしいのは2つ。

 1つ目は、先進国と貧困国との関係。

 先ほど「裕福な人と貧乏な人の暮らしは違うものになるかもしれない」と言いましたが、

 先進国の暮らしと貧困国の暮らしとでは全くもって次元が違うというのは誰もが知っていることでしょう。

 先進国では旅行・娯楽品・サービスなど最低限の暮らしには必要ないものが多い。

 対して貧困国では、食べ物・衣服さえまともに手に入らない地域がある。住む家のない人もいる。

 貧困国が貧困国である事情は今回のプレゼンで言っている内容と少しずれますが、暮らしに関しては先進国と貧困国のような関係になるかもしれない。

 それを望むのかどうか。


 2つ目は、日本という国家について。

 日本人は、世界基準からするとはるかに思いやりの深い人種とされています。

 「物事を金で判断してはいけない」というのが美学とされ、金持ちが悪で貧乏人が正義である思想が根付いています。

 普通の漫画でも金持ちの態度は悪く、貧乏人の態度は謙虚に書かれます。

 そんな日本が金を重視してしまったら、日本の大切なものが失われてしまうかもしれません。

 今回のプレゼンはアメリカ目線で話を進めていましたが、同じ先進国である日本も他人事にできる話ではない気がします。

 


 ただ、最近は「金だ効率だ」と言う横柄な人が主人公側にいるドラマが増えましたね。

 





 Thank you.






 
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スーパープレゼンテーション考察 ~条件を増やせば理想に近くなる~




 今回のテーマ動画

 Amy Webb:How I hacked online dating

 訳:『どのようにしてオンライン出逢いサイトを改善したか』

 動画リンク(日本語字幕付き)



 
 
 さて、

 今回のテーマは「結婚」と「アルゴリズム」。

 今日でてくるアルゴリズムは、「条件」と考えていいでしょう。

 
 経済的にも心理的にも結婚が難しいと言われている今日この頃、結婚は昔よりも成功しにくくなっていると言えるでしょう。

 ある人は出会いを感じられなかったり、ある人は出会いの多さ故につい選り好みをしてしまう。

 一人暮らしがしやすい環境なだけに、趣味の違いを妥協してまで結婚しようと思う人も減っています。

 また、いざ結婚しようとしても仕事が不安定で一歩踏み出せない人も多いでしょう。子供や家のことを考えると結婚の経済的コストは大きい。

 出会い・趣味の一致・経済状況……結婚のハードルはいまだ上がり続けています。

 ましてや、「白馬に乗った王子様」のような出会いなどありえません。


 
 今回のプレゼン者・エイミー・ウェブ氏もそんな婚活の難しさに悩んでいる一人。

 元々人口の少ない人種だから同郷の人が周りにいないけれど、できるだけ自分と趣味や好みの合う人と結婚したい。

 しかし30歳にして付き合ってきた彼氏とも別れてしまい今や出会いがない。

 自分の町に理想の男がどれだけいるかを計算したところ、150万人中たったの35人。0.0023%。

 とすると、1日10人と出会うとしても理想の男にいつ出会えるかわからない。いや、出会えるかすらわからない。

 さらに、たとえ自分が好きになっても相手の方は自分を好きと思ってくれないかもしれない。

 理想の出会いというのがいかに絶望的なのかがよくわかります。

 ハート 割れる

 では、どうやって理想の男を探せばいいのか?

 彼女が目を付けたのはインターネットによるオンライン出会いサイト

 出会いサイトというと日本ではその違法感ゆえにかなり悪い印象を受けるのですが、外国では普通に受け入れられているようですね。10人に1人やってるとはすごい。

 外国の方では年齢制限とかがしっかりしてるのか、もしくは未成年がどうのこうのをあまり気にしないのか。


 何はともあれ彼女は出会い系サイトを利用することに。

 仕組みは簡単。

 自分のプロフィールと写真を載せて登録をするだけ。

 プロフィールの中に自分の趣味や性格などを書き込み、自分の選んだ写真と一緒に載せる。

 あとは、自分好みの性格や趣味などの条件を打ち込むことで条件に合った登録者を見せてくれるから、それにメールをして出会いは成功。

 もしかしたら相手の方からメールが来て誘われるかもしれません。

 出会い系専用の小さなグーグルみたいなものですね。

 グーグル

 で、成功したかというとこれが大失敗。

 まず初めに出た問題は、男たち自体が自分に魅力を持ってくれないこと。メールの数も比較的少なめ。

 原因を調べると、顔写真に出した自分の露出度が低くセクシー性に欠ける。セーターを着ていたり動物といっしょにいると自分の魅力が薄れてしまう。

 プロフィールに書いた内容もどこか微妙。収入が不安定なジャーナリストを仕事として書いたり、プログラムが使えるといったことを趣味として書いている。

 女っ気0。仕事仲間としては誘いたくなるかもしれませんが恋人としての魅力は薄い。

 ですが一応いろんな男からメールは来たので次へ。

 2つ目は、検索から出会った男でもまだまだ理想とは程遠いこと。

 同じ趣味でも細かい違いや種類の違いがあるし、マナーや礼儀に対する違いもある。相手との距離感に違和感を感じることも。

 プロフィール内容が具体的でなかったり少し良く書いてあるのが理由。 

 
 何にしろ、このままでは理想の男に出会えない……そう思った彼女は、あるデータの収集を始めました。

 集めるのは、下ネタを言った回数・口の悪さ・ハイタッチの強要回数など相手の行動パターン。

 ちなみにハイタッチに関しては向こうの文化でしょうかね。喜びのハイタッチとか挨拶のハイタッチとか。

 どうやら行動の習性にはいくつかの傾向があるらしい。例えば、ある酒を飲む人は態度が悪いなど。

 ならば、男たちの行動やしぐさを分析していき、その根本となる習性をもたない人を条件にしていけば、すぐに理想の相手が見つかるかもしれない。

 もしくは、プロフィールに書いてない条件でもプロフィールにある特徴から傾向をつかんで、相手が条件を満たしているかどうかが分かるかもしれない。

 
 ここから彼女の理想の男検索システムの作成は始まります。

 まず、100%理想の男はいないだろうから、理想の男である条件を作り1軍と2軍に分割。

 条件というのは、人種とか学歴や子供の数・趣味・外向的内向的などなど。

 1軍にある条件を満たさない人は論外。満たした人の中で2軍の条件をいくらか満たしていれば理想の男と言ってよい。

 さらに条件にポイントを付けて理想の男とそうでない男との基準をはっきりさせる。

 格付けされている男たちの気持ちを考えなければ、まさに完璧の理想の男検索システムと言っていいでしょう。

 
 また、魅力のないプロフィールの表現を抽象的にし、魅力あるように書き換える。

 露出の少ない写真も露出の高い服を着た写真に変更。

 その他モテる女性たちのプロフィールを分析し、そうなるようにさらに手を加える。

 ネットワーク


 
 彼女の作ったシステムは大成功。デートの申し込みは殺到。

 あとはたくさんの男たちから条件に合う人を探すだけ。

 そしてシステムを作ってからしばらくたった頃、ついに条件を満たす男からお誘いが。

 実際にデートしてみると、話は14時間も盛り上がり自分に文句なしの趣味を持っている。

 2人はすぐに連絡を取り合う間柄になりました。


 エイミー氏と彼が出会ってから1年半後、彼からプロポーズされ結婚。

 子供も生まれて、現在彼女はバラ色の生活を送っています。めでたしめでたし。

 ちなみにこの検索システムの使用を出会ってからしばらくした後に彼に告げたそうですが、その完璧さに彼も満足とのこと。

 検索システムのおかげで2人は出会えたわけだし、愛さえあれば関係ないんでしょうねぇ。
 

 個人的にはこのシステムに共感を持てないんですが、皆さんはどうでしょう?

 相手に点をつけられて、○○点とかされるのは男としてね……アレですよ。

 エイミー氏の相手はすんなりと許してくれたようですが、人によっては屈辱に感じたりするかもしれません。

 出会い系サイトやっている人はやってみる価値があると思いますが、ばらすときは慎重に。相手を傷つける可能性があるからね。





 今回は婚活サイトに対して条件(アルゴリズム)をたくさん作っていくという風でしたが、他の分野でもこの発想は使えるはずです。

 一番身近なところで言うと、インターネットの検索。

 1単語だけの検索だと何千万もの検索結果が出てくるのですが、検索ワードを2つ3つと加えていくことで検索結果を絞り込むことができます。

 また、検索ワードを""(「2」をshiftキー押したまま押す)で囲むと、その検索ワードが固定されて記されているサイトのみ検索結果に出る……といったテクニックも効果抜群。1/10くらいにはなりますね。
 
 良くわからない人は実際にやってみると理解できると思います。


①条件となる検索ワードを増やす
②重要な部分は「"」で囲む


 この2つを使うことでお店や物を検索で探すときグッと楽になること間違いなし。

 検索結果を一ケタ台まで絞り込めたらあなたの情報分析力は高いでしょう。


 
 ただ男女関係もネット検索もそうですが、

 あまりに条件を増やし過ぎると男自体に、検索結果自体に出会えないかもしれません。

 やはり少しの妥協は必要。






 Thank you.








 
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スーパープレゼンテーション考察 ~動物にはモラルがある。死にゆく動物にも。~



 今回のテーマ動画

 Frans de Waal:Moral behavior in animals

 訳:『動物にある道徳的行動』


 動画リンク



 さて、

 今回のテーマは「動物」「モラル」です。

 

 モラルというと、人生ゲームにおけるプレイヤーのステータスとして超有名。

 人に良いことをしたとき上がり、悪いことをすると下がるアレです。

 人生ゲームをしたことがある人は真っ先に人生ゲームを思い浮かんだと思います。

 「モラル」は、英語における「Morality」(道徳)の最初をとってつけた造語。別に意味自体はさほど変わらないのですが、外国では通じない可能性があります。注意。

 
 そんなわけでモラル……つまりは道徳。

 いつもいつもモラルの低下を嘆かれている人間ですが、今回のテーマに人間は関係ありません。

 今回語るのは動物の道徳。

 まず考えるのは、

 動物に道徳といったものがあるのか?そもそも感情があるのか?

 空腹のときは食べ物に飛びつき、満腹になったら眠る。朝に起き、夜に寝る。

 雪が降ったら犬は喜んで駆け回り、猫はこたつで丸くなる。

 動物は本能に従って生きている……というのが常識。

 だから動物に感情などあるはずがない。ましてや道徳などあるわけがない。



 そんな主張をある実験で覆したのが、今回のプレゼン者・フランス・ドゥ・ヴァール氏。

 彼の始まりは、チンパンジーの研究から。

 チンパンジーは基本的に群れで生息し、群れの中にはボスがいる。ボスの座を奪うため戦いあうことも何度かあることでしょう。

 また、相手の縄張りを侵し侵されたらやはり争い。食糧を巡った争いも珍しくないだろう。

 そんな姿を見ていたから彼は思った。

 「動物とは基本的に自分のためだけに動くものではないのか」

 と。

 しかし、研究のうちに考えは変わっていった。

 彼を驚かせたのは、喧嘩をしていたチンパンジーが仲直りをする姿。

 人間でいうなら、殴り合いのけんかをした後に川辺に寝そべって「お前やるな……」「お前もな……」と言っているパターン。

 ついさっきまで喧嘩をしていた2匹はキスとハグをして仲直り。種によっては性行為も。

 弱肉強食とは違う。勝者は勝ち誇り敗者は勝者に従う……ではない。

 勝敗を付けず引き分けとして仲直りをしたのです。


 これは一種の人間らしさと言ってもいい。

 彼が考えるモラルの基礎は、「正義・公平さと思いやり」

 その基礎から考えても、チンパンジーの行動はモラルに沿った立派なことだと言えるでしょう。

 

 ヴァール氏は、ここからさらなる実験を行います。

 内容は簡単。チンパンジー2匹の力でないと引き寄せられない箱(エサ付き)を置き、それを協力して引き寄せられるかというもの。

 まずは普通に……これは成功。2匹は餌をとることができました。

 では、2匹のうち1匹が満腹状態(箱を引き寄せる目的がない)ときはどうなるでしょう?

 動画を見ると爆笑とともによくわかるのですが、満腹の方も渋々ながら手伝い成功するのです。

 渋々ながら手伝ったのです。

 もしもチンパンジーが利己主義ならば、満腹状態の彼は一切手伝いをしない。彼には必要ないから。

 協調性、モラルがあったからこそ彼は渋々ながらも空腹チンパンジーの手伝いをしたのです。

 まぁ今回の手伝いによるお返し(恩返し)を期待したのなら利己主義と言えなくもありませんが、それは考えなくてもいいでしょう。

 仲間のために自分が損となることをしたことがポイントですからね。


 さらには、少し特殊な方法で象に対しても実験。

 そうするとチンパンジーよりも面白い結果に。

 なんと、一方の象がズルをしてもう一方にだけ引っ張らせるという荒業を。なかなか賢い。

 詳しい方法は動画にあるので省きますが、とにかく2匹で協力してエサを取ることはできた。

 利己主義なら1匹でやろうとするわけだから、やはりモラルがあると言えるでしょう。

 信頼



 これらの実験で、とりあえず動物は協力し合う感情を持っていることは分かった。

 次は共感性の実験。

 共感性とは相手がしている行動を無意識に真似してしまう習性のことで、2種類あります。

 1つ目は身体的共感。周りの雰囲気に合わせて自分の感情も変わっていくというもの。

 悲しい場面に悲しいメロディーを流すのは、この身体的共感を働かせて泣かせるため。

 そして2つ目が認知的共感。周りの行動に合わせて無意識に自分もその行動をするというもの。

 もらい泣きやあくびの伝染などが主な例。共感能力が高いほどあくびは伝染されやすいとか。

 重要なのは、この認知的共感が人間をはじめとするごく少数の動物にしか働かないこと。

 いわば身体的共感が第1ステップで、認知的共感が第2ステップ。

 そして、チンパンジーや像は認知的共感を持っていることから人間に近い共感性を持っているとされています。

 ハート



 その他、チンパンジーには慰めや利他的行為(他人のためにする行動)をすることが実験で判明。

 さらに相手から脅しを受けたり強要されたりすると利他的行動をしなくなるというのも判明。

 仲直り、協力、共感、慰め、利他的行為……

 これらを持っているチンパンジーは、ほとんど人間に近い感情を持っていると言っても過言ではないでしょう。

 残っている違いは、言語や知性、そして公平さ

 不平等な環境においてチンパンジーはどのような行動をとるのか?

 劣悪な環境にいるものも優良な環境にいるものも不平等に対して怒りを持てるのか。

 それが最後に行う実験。


 実験対象はオマキザルという猿の一種。

 2体をお互い見えるところに入れ、同じ課題を与える。

 課題をクリアすると、一方(劣勢側)には普通の食料・きゅうり、もう一方(優勢側)には高級な食料・ブドウを与えられます。

 与えられる食料の違いに彼らはどう思うのか。

 その結果は目に見えるほどすさまじいものでした。

 優勢側がブドウをもらうと劣勢側が「え?マジで!?」という表情をしてすぐさま課題をこなす。

 そしてブドウがもらえないとわかると「こんなしけたもん食えるか!!」とばかりにもらったきゅうりを思い切り投げつけ、檻をギシギシと揺らし、床を必死にたたく。

 課題が間違っているのかといろいろ試すものの、劣勢側がもらえるのはやはりきゅうり。

 そのたびにきゅうりを投げつけ、激しく怒りつづける。

 なんというか……とんでもない必死さ。

 このとてつもない怒りっぷりは、昭和によく言われたちゃぶ台返しを彷彿とさせます。

 ちゃぶ台返し

 もっと驚くべきことは優勢側の行動。

 必死になる劣勢側の行動を見て、優勢側も隣がブドウをもらうまでもらわないと拒否したのです。

 間違いなく、劣勢側に共感し公平さを保とうと思ったが故の行動でしょう。

 
 劣悪な環境を怒り、優良な環境を拒否できる。

 これこそまさに人間が持つ公平さと言って差し支えない。




 
 というわけで、動物にもいろんな感情があり、人間に近い感情があるとわかった今日この頃。

 実は他の資料によると、動物が種類の違う動物を助けることもあるそうです。

 魚などに良くある共存関係はともかく、馬が人を助けたり犬が猫を助けたり猫が鳥を助けたり……などなど。

 人間が犬や猫や馬に特殊な思い入れをするのも珍しくないあたり、実際にありそうな話。
 
 今回のプレゼンはチンパンジーや象に注目されていましたが、他の種類にも人間には見せていない感情があるかもしれません。

 今後は動物ともより分かり合えるようになるといいですね。

 
 ただ、そうすると普段食用にしている豚や牛たちにも感情があることになり、気まずくなることは必至。

 牛肉や豚肉を食べているってことは、その分牛や豚を殺しているってことですもんねぇ。

 牛小屋や豚小屋で、

 「トン助や……本当にいなくなってしまったかえ…」「最近は若いもんばかり先に死におって……」

 「トン助もこの前まで巷をブウブウ言わせてたのにな……」

 「実は…トン助のこと前から…」「よすんだ牛子、あいつのことはモウ忘れるんだ…」

 なんてドラマチックなことが起きていたら、なんか食肉にし辛い……


 いや、そういうドラマがあるからこそ、食料はありがたく残さず食べなければならないのです。

 他の命をありがたくいただくことも立派な道徳のうち。

 むしろ、人間が動物に劣っている感情とはまさに「命をいただくことのありがたさ」かもしれません。





 
 
 Thank you.







 
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スーパープレゼンテーション考察 ~故郷は異なもの味なもの~


 今回のテーマ動画

 Pico Iyer:where is home?

 訳:『あなたの故郷はどこですか?』

 動画リンク(日本語字幕付き)
 



 さて、

 新年初のまともな記事となります。

 2014年も元気に活動していきますのでよろしくお願いします。



 では本題に行きましょう。

 今回のテーマは、「国際社会」と「故郷」。

 プレゼンの始まりはこの言葉。

 『皆さんの出身はどこですか?』という単純な質問。

 おそらく半数以上の人はこう答えるでしょう。

 日本出身です、と。

 日本語を使う(インターネットでも)国は日本だけですし、おそらくこの記事を読んでいる人のほとんどは現在日本にいるはず。

 じゃあもう半分のうちの8割はどう答えるのでしょうか?

 日本に留学などをしている人は、その元となる国。日本生まれで今も日本にいるけど教育は別の国で受けた…という人は、教育を受けた国。

 そうなるかもしれません。

 残りの人はどうなるのかというと、答えに詰まってしまうかもしれません。

 例えば、親は日本人とフランス人だけど生まれた場所はブラジル、その後すぐに転勤でイギリスに行って小学校を受け、その後アメリカで大人になり、仕事の関係で中国に15年、バカンスでインドに10年滞在。

 そして今は日本に戻って10年近くになる……という人。
 
 日本・フランス・ブラジル・イギリス・アメリカ・中国・インドと7か国を渡って生活してきたわけですが、

 果たしてこの人の出身はどこでしょう?

 親の出身国である日本・フランスか、生まれの地ブラジルか、幼少にいたイギリスか、青年期にいたアメリカか、一番長く住んでいた中国か、一番心の安らいだインドか、あるいは今いる日本なのか。

 いっそのこと地球出身と言ってしまうのがいいのか?まぁこの答えだと怒られると思いますが。

 でも今って宇宙飛行士とかは火星近くにいるんだよなぁ……その人は火星出身?


 ━━━○)´Д`)・:'. グハッ


 
 交通が発達していろんな人がいろんな国に滞在するようになった今、誰がどの国出身というのが非常に分かりにくくなっています。

 今は日本生まれ日本育ちであるあなたも、今後どこかでアメリカや中国・インドやアフリカなどいろんな国で生活するかもしれない。

 手

 では、どの様な基準で「自分の出身国」を言えばいいのでしょうか?

 今回のプレゼン者・ピコ・アイヤー氏も自分の出身国に迷う人。

 彼はインド人種でありながらインド語は全く話せず、教育を受けたのはイギリス、長年住んでいたのはアメリカ、今多く接するのは日本、と様々な国をわたってきています。

 そんな彼が自分の出身国とするのは、「心に深く残っていて多くの時間を過ごしたいところ」

 生まれた場所は関係ない。育ったところも関係ない。

 今、自分自身の心に深く残っていてずっといたい・戻りたいと思うところ。

 そこがあなたの出身地……「故郷」なのです。

 
 人の心というのは常に変わっていくものですから、当然心のよりどころも変わっていきます。

 最初は生まれ育った地を故郷と思うかもしれませんが、いろんな場所に行って今まで以上の感動を受ける場所に出会えるかもしれない。

 そこで自分の中の故郷は変わっていくのです。

 そう、故郷とは時が経つにつれて変わっていくもの。

 極端なことを行ってしまえば、今は日本が故郷でも20年後は中国を故郷と言っているのかもしれない。凄い人は3日で変わるかもしれない、冗談抜きで。



 転勤とか引っ越しとかをしない人にはあまりピンとこないかもしれません。日本人は特に他国との関係が薄い状況ですからね(日常的な部分で)。

 他の国を見てみると、国と国とが密接にかかわっている所は多くあります。

 例えばアメリカ。元々住んでいた先住民たちに加え、昔に送られてきた黒人種や白人種たちもいる。またスペイン系の移民としてヒスパニックなども有名。

 さらに経済関係でアメリカに移住するアジア系人もいるため、アメリカは「人種のサラダボウル」と呼ばれているとか呼ばれていないとか。

 例えばインド。最近のすさまじい発展によりいろんな国から仕事による移民がたくさん。特にアメリカとのつながりは強く、元の言語に加えて英語が主要言語となっています。

 他にも狭い地域に2つ以上の民族が住んでいたり、1つの国に3つも4つも主要言語があったりと様々。

 対して、議員が日本人だけで主要言語も日本語1つの日本……まぁ個性があると言えばある?


 日の丸


 ちょっと話がそれました。

 心……魂のよりどころを故郷にして得られるメリットは何でしょう?

 ピコ氏はそのメリットについて、

 「人種差別や単純な価値判断を克服できるようになった」

 と語ります。

 簡単に言えば、「人種・国家間の対立を客観的な目で見られる」ということ。

 自分が対立の当事者の中にいたとしても、一歩離れて冷静にその対立を見られるようになるのです。

 マルセル・プルーストという有名人の格言にも、

 「真の発見の旅とは新しい景色を探すことではない――新しい目を持つことなのだ」

 とあります。


 日本が今一番敏感になっているのは、韓国との問題でしょう。

 今現在、日本の中では反韓思想が増えつつあり、韓国の中でも反日思想が多くを占めている状態。連日日本と韓国の対立がいろんなメディアで見られ、特にネットでは過激な意見が多くみられます。

 日本に住んでいる日本人としては、どうしても感情的にならざるを得ない問題。

 現にこっち側の意見も向こう側の意見も平行線をたどり少しも解決する気配がない。

 しかし、日本を離れて他国へ行けばその感情をなくすことができる。

 日本に対する執着心も薄れて冷静になれるし、日本の常識を考えずに韓国を考えることもできます。

 良く言えば冷静に、悪く言えば傍観者として両者を見ることができるのです。


 自分に対しても敵に対しても客観的な目で見られるというのは、今後国際的な仕事をしていくうえで大きな強みになっていくでしょう。

 
 
 故郷の存在が与えるメリットはもう1つあります。

 それは、自分の心を静かにさせてより豊かにさせること。

 今の社会ではいろんな人から来るメールの返信に追われ、仕事も毎日ある。場合によっては地域や国を転々とする生活を過ごすかもしれません。

 自分の仕事場には心を落ち着ける場所がない。

 ずっと仕事ばかりしていてはいつか心が失われ人格が壊れてしまう。

 だから、時折自分の心をいやすために故郷へ戻る。そのために故郷へ戻る日がある。

 故郷では仕事のことを考えない。携帯電話も持たない。テレビもパソコンも持たない。自分が今まで追われてきたものをその時だけ手放す。

 そして何もない所で何もせず、ただ自分自身と向き合い自分自身について考える。

 仕事から離れて自分を見つめることが心を癒し、自分自身を成長させ、よりよい自分を作り出すのです。

 
 まぁ何にもない所はそうそうありませんが、時には携帯電話やパソコンから離れる日があってもいいでしょう。

 普段の場所でやろうと思うとかなり難しいんですがね(笑)これが。

 携帯電話



 最後は、私たちがさらに国際的になっていくとどうなるかという話(本当はプレゼンの中盤にあった話ですが)。

 彼はその例として、韓国人とドイツ人のハーフがタイ人とカナダ人のハーフに恋する話を出しました。

 全く違う国と接してきた2人は出会い、結婚してアメリカへ。

 そして2人は子供を産む。

 では、

 生まれた子供は、韓国人か、ドイツ人か、タイ人か、カナダ人か、それともアメリカ人なのか?

 否、子供の人種はもはやそのどれでもなくなる。

 2人の子供は人種という縛りから抜け出ることができるのです。


 いろんな人種がミックスされた人が世界の大多数となったらどうなるでしょうか?

 国や人種と言う違いはなくなり、多くの国際紛争が解決されるかもしれません。

 宗教や利益による争いは続くかもしれませんが、少なくとも人種をあれこれ言える状況はなくなるはず。

 4分の1、8分の1、256分の1しか敵国の血を持たない人をあなたは敵国の人と思えるのか。

 いつしか「○○人」なんて区別はなくなって「地球人」と統一されるかもしれませんね。

 ですが、欠点はあります。

 国や人種が一つになることは、それ以外の国や人種が滅ぶことを指します。

 国が滅べば、その国の文化も滅ぶ。歴史も滅ぶ。

 文化の絶滅を好まない人は多くいると思われます。


 平和を取るか文化を取るか……


 それはあなた次第。

 



 平和や文化はともかく、今回のプレゼンで重要なのは1つ。

 自分にとっての「ホーム」を見つけよう

 ということ。

 自分の帰る場所、帰ってきたときに安心する場所。

 そういうものがあってこそ、慣れないところでも嫌なところでも力強く生きていける。

 あなたのホームはあなたの自由です。


 まぁ個人的に「パソコン」が自分のホームとならないようにしたいところですね。






 Thank you.







 
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2014年 新年の挨拶

 



 あけましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。



 新年3


 皆さんにも私にとっても良い年でありますように。


 
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天癸ワヤ

Author:天癸ワヤ
 2016年9/14再開 リンクフリーです。
 初心者でもわかりやすいよう紹介を心がけるメイプルストーリーのブログ。

 メイプルの複雑なシステムを60%くらい理解できるよう紹介しています。

 

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